[2004年文献] 家庭血圧は脳出血および脳梗塞の独立した予測因子

これまでに大迫研究から,家庭血圧値は随時血圧値よりも全脳卒中発症リスク予測能に優れることが報告されている。今回は,家庭血圧値による脳卒中各病型(脳出血および脳梗塞)の発症リスク予測能について,日本人一般住民を対象とした10.6年間の前向きコホート研究による検討を行った。その結果,家庭血圧値は脳出血および脳梗塞の独立した予測因子であることが示された。脳卒中リスク予測のために,今後の家庭血圧測定の有効活用が推奨される。

Ohkubo T, et al. Prediction of ischaemic and haemorrhagic stroke by self-measured blood pressure at home: the Ohasama study. Blood Press Monit. 2004; 9: 315-20.pubmed

コホート
40歳以上の大迫町住民のうち,脳卒中の既往がなく,朝の家庭血圧を3回以上および随時血圧を1回以上測定した1702人を,2001年12月31日まで平均10.6年間追跡。
平均年齢は61歳,男性の割合は37%。
結 果
◇ 対象背景
ベースライン時またはそれ以前に喫煙していた人の割合は22%,降圧薬服用率は30%,心疾患既往1%,糖尿病既往13%,高脂血症既往12%であった。

追跡期間中にはじめて脳卒中または一過性脳虚血発作を発症したのは153人(9%)であった。
このうち,106人(69%)が脳梗塞,28人(18%)が脳出血,12人(8%)がくも膜下出血,4人(3%)が一過性脳虚血発作,3人(2%)が病型不明であった。

脳卒中発症者の家庭血圧値および随時血圧値は,非発症者にくらべて有意に高かった。

◇ 収縮期血圧(SBP)と脳卒中および各病型のリスク
・ 全脳卒中
家庭SBPは,全脳卒中発症リスクと有意な関連を示していた(P for trend<0.001)。家庭SBPが135 mmHg以上のカテゴリーでは,114 mmHg以下に比して有意なリスク増加がみとめられた(相対ハザード[RH]2.22,95%信頼区間1.30-3.81,P<0.004)。
一方,随時SBPと全脳卒中発症リスクとの関連はみられなかった(P for trend=0.2)。

・ 脳出血
家庭SBP,随時SBPのいずれについても,脳出血発症リスクとの関連はみられなかった(それぞれP for trend=0.2,P for trend=0.5)。

・ 脳梗塞
家庭SBPは,脳梗塞発症リスクと有意な関連を示していた(P for trend<0.001)。家庭SBPが135 mmHg以上のカテゴリーでは,114 mmHg以下に比して有意なリスク増加がみとめられた(RH 3.44,1.61-7.36,P<0.004)。
随時SBPも,脳梗塞発症リスクと有意な関連を示していた(P for trend=0.03)。随時SBPが135 mmHg以上のカテゴリーでは,114 mmHg以下に比して有意なリスク増加がみとめられた(RH 2.17,1.09-4.34)。

◇ 拡張期血圧(DBP)脳卒中および各病型のリスク
・ 全脳卒中
家庭DBPは,全脳卒中発症リスクと有意な関連を示していた(P for trend<0.001)。家庭DBPが85 mmHg以上のカテゴリーでは,69 mmHg以下に比して有意なリスク増加がみとめられた(RH 2.42,1.48-3.96)。
一方,随時DBPと全脳卒中発症リスクとの関連はみられなかった(P for trend=0.3)。

・ 脳出血
家庭DBPは,脳出血発症リスクと有意な関連を示していた(P for trend=0.004)。家庭DBPが85 mmHg以上のカテゴリーでは,69 mmHg以下に比して有意なリスク増加がみとめられた(RH 4.02,1.41-7.44)。
一方,随時DBPと脳出血発症リスクとの関連はみられなかった(P for trend=0.4)。

・ 脳梗塞
家庭DBPは,脳梗塞発症リスクと有意な関連を示していた(P for trend=0.002)。家庭DBPが85 mmHg以上のカテゴリーでは,69 mmHg以下に比して有意なリスク増加がみとめられた(RH 2.20,1.26-3.85)。
一方,随時DBPと脳梗塞発症リスクとの関連はみられなかった(P for trend=0.1)。

◇ 家庭血圧と随時血圧の脳卒中リスク予測能
血圧値を連続変数とした検討を行った結果,家庭SBPの10 mmHgの増加は,全脳卒中,脳出血,脳梗塞発症リスクのそれぞれ32%,30%,29%増加と有意に関連していた。また,家庭DBPの5 mmHgの増加は,全脳卒中,脳出血,脳梗塞発症リスクのそれぞれ28%,17%,18%増加と有意に関連していた。
随時SBPおよびDBPについても,脳卒中,脳出血,脳梗塞と線形の関連がみとめられたが,予測能は家庭血圧よりも低かった。

家庭血圧値と随時血圧値の両方をCoxモデルに含めて解析を行うと,家庭血圧のみが全脳卒中発症リスクとの独立した関連を示していた。
両方を含めたモデルから家庭血圧のみを除くと,適合度が有意に低下した(P<0.001)。一方,随時血圧のみを除くと,適合度に変化はなかった(P>0.8)。
同様に,脳出血および脳梗塞発症リスクについても,家庭血圧値はそれぞれ随時血圧値より有意に強い,独立した関連を示した(P<0.02)。


◇ 結論
これまでに大迫研究から,家庭血圧値は随時血圧値よりも全脳卒中発症リスク予測能に優れることが報告されている。今回は,家庭血圧値による脳卒中各病型(脳出血および脳梗塞)の発症リスク予測能について,日本人一般住民を対象とした10.6年間の前向きコホート研究による検討を行った。その結果,家庭血圧値は脳出血および脳梗塞の独立した予測因子であることが示された。脳卒中リスク予測のために,今後の家庭血圧測定の有効活用が推奨される。


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