[2006年文献] 24時間自由行動下収縮期血圧,平均血圧,拡張期血圧の脳卒中リスク予測能は,脈圧よりも優れる

40歳以上の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,24時間自由行動下血圧(ABP)および随時血圧による4つの血圧指標(収縮期血圧[SBP],拡張期血圧[DBP],脈圧[PP],平均血圧[MBP])の脳卒中発症リスクの予測能を比較した。11年間の追跡の結果,随時血圧の血圧指標による脳卒中発症の予測能は,いずれもABPより劣っていた。ABPの4つの指標のあいだで比較すると,PPの脳卒中発症の予測能は,SBP,DBP,およびMBPよりも有意に低かった。これより,ABPで測定したSBP,MBPおよびDBPの脳卒中発症リスク予測能は,PPよりも優れていることが示された。

Inoue R, et al. Predicting stroke using 4 ambulatory blood pressure monitoring-derived blood pressure indices: the Ohasama Study. Hypertension. 2006; 48: 877-82.pubmed

コホート
研究参加への同意が得られた40歳以上の1552例のうち,自由行動下血圧測定時間が日中で8時間未満もしくは夜間で4時間未満だった10例,脳卒中または一過性脳虚血既往がある78例,随時血圧データが不十分だった193例を除いた1271例を,平均11年間追跡。
平均年齢は61歳で,男女比は4対6。
喫煙は245例(19%),降圧薬服用は350例(28%),心疾患既往は14例(1.1%),糖尿病既往は220例(17%),高脂血症既往は202例(16%)。
結 果
追跡期間中に死亡したのは192例。
脳卒中または一過性脳虚血を初発したのは113例。うち脳梗塞が74例(65%),脳出血が24例(21%),くも膜下出血が10例(9%),一過性脳虚血が3例(2.6%),病型不明が2例(1.8%)。

脳卒中発症例では,非発症例よりも自由行動下血圧(ABP)および随時血圧が有意に高かった(P<0.001)。
脳出血例のほうが脳梗塞例より昼間血圧が高い傾向がみられた。

各測定法(24時間ABP,日中ABP,夜間ABPおよび随時血圧)における収縮期血圧(SBP),拡張期血圧(DBP),平均血圧,脈圧は,随時脈圧を除き,すべて全脳卒中の発症リスクと有意に相関した(P<0.05)。
随時血圧の予測能は,いずれのABPよりも劣っていた。
これらの相関は,脳卒中の各病型においてもほぼ同じだった。

コックス比例ハザードモデルにより,自由行動下で測定したSBP,DBP,平均血圧および脈圧の尤度比を比較した結果,脈圧はいずれの測定法よりも予測能が有意に低かった。

以上より,24時間自由行動下で測定した収縮期血圧,平均血圧および拡張期血圧の脳卒中リスク予測能は,脈圧よりも優れているといえる。


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