[2009年文献] 仮面高血圧者では,持続性高血圧者と同様に無症候性脳病変リスクが増加

家庭血圧測定により診断された白衣高血圧,および仮面高血圧における無症候性脳病変のリスクについて検討したはじめての研究。仮面高血圧者では,持続性高血圧者と同様に無症候性脳病変のリスクが有意に高くなっていることが示された。一方,白衣高血圧者の無症候性脳病変リスクは,持続性正常血圧者と同等であった。無症候性脳病変のリスクとなる白衣高血圧や仮面高血圧を見逃さないためにも,家庭血圧測定は有用と考えられる。

Hara A, et al. Detection of silent cerebrovascular lesions in individuals with 'masked' and 'white-coat' hypertension by home blood pressure measurement: the Ohasama study. J Hypertens. 2009; 27: 1049-55.pubmed

コホート
大迫研究の対象となった55歳以上の3,077人のうち,入院中・認知症または寝たきりの185人,町外で就労していて平日の自由行動下血圧測定が困難だった492人,研究参加への同意が得られなかった1,340人を除外した1,060人を解析対象とした(断面解析)。
平均年齢は66.3歳,女性の割合は67.5 %。

対象者全員にMRI検査を行い,グレード1以上の白質病変,ラクナ梗塞,またはその両方がみとめられる場合に無症候性脳病変と定義した。
また,MRI検査の際に血圧測定を2回行い,これを随時血圧(casual blood pressure: CBP)とした。

家庭血圧(home blood pressure: HBP)については,毎朝(起床後1時間以内,2分間の安静ののちに座位で測定)の値を4週間記録し,その平均値を解析に用いた。

対象者を持続性正常血圧,白衣高血圧,仮面高血圧,持続性高血圧のいずれかのカテゴリーに分類して解析を行った。分類の基準,および人数は以下のとおり。
・ 持続性正常血圧(SNBP): 456人(53 %),CBP 140 / 90mmHg未満かつHBP 135 / 85mmHg未満
・ 白衣高血圧(WCHT): 312人(29 %),CBP 140 / 90mmHg以上かつHBP 135 / 85mmHg未満
・ 仮面高血圧(MHT): 90人(9 %),CBP 140 / 90mmHg未満かつHBP 135 / 85mmHg以上
・ 持続性高血圧(SHT): 202人(19 %),CBP 140 / 90mmHg以上かつHBP 135 / 85mmHg以上
結 果
◇ 対象背景
持続性正常血圧(SNBP),白衣高血圧(WCHT),仮面高血圧(MHT),および持続性高血圧(SHT)のカテゴリー間で主要な心血管危険因子の保有率を比較すると,MHTの背景はSHTと,WCHTの背景はSNBPとそれぞれ近い傾向がみとめられた。

SNBPにくらべ,MHTで有意に高くなっていたのは男性の割合(P<0.0001),肥満の割合(P=0.003),喫煙率(P<0.0001),CBP(P≦0.0001),降圧薬服用率(P<0.0001)。

◇ 血圧と無症候性脳病変リスク
SNBP,WCHT,MHT,SHTの各カテゴリーにおける無症候性脳病変の多変量調整後オッズ比は以下のとおりで,MHT,SHTではリスクが有意に高かった(*P<0.05 vs. SNBP)。
   SNBP: 1.00 (対照)
   WCHT: 1.03 (0.75-1.41)
   MHT: 2.31 (1.32-4.04)*
   SHT: 1.74 (1.18-2.57)*
この結果は,白質病変とラクナ梗塞のそれぞれについて解析を行っても同様だった。
また,降圧薬服用者が含まれていることの影響についても検討したが,いずれのカテゴリーについても有意な相互作用はみとめられなかった(P for interaction>0.2)。

◇ 無症候性脳病変に関連する因子
多変量ロジスティック回帰分析の結果,無症候性脳病変との関連を示していた因子は以下のとおりで,随時収縮期血圧,性別,BMI,喫煙,飲酒,高脂血症,糖尿病,心房細動,心血管疾患はいずれも有意な因子とはならなかった。
   年齢(+10歳): オッズ比2.71 (95 %信頼区間2.11-3.49,P<0.0001)
   家庭収縮期血圧(+10 mmHg): 1.18 (1.05-1.34,P=0.0057)
   降圧薬服用: 2.02 (1.51-2.72,P<0.0001)
また,随時収縮期血圧,家庭収縮期血圧のかわりにそれぞれ随時拡張期血圧,家庭拡張期血圧を用いた解析では,家庭拡張期血圧も無症候性脳病変との有意な関連を示していた(+10 mmHgごとのオッズ比1.51,95 %信頼区間1.24-1.84,P<0.0001)が,随時拡張期血圧は有意な因子とはならなかった(0.94,0.81-1.08,P=0.38)。

この結果は,白質病変とラクナ梗塞のそれぞれについて解析を行っても同様だった。


◇ 結論
家庭血圧測定により診断された白衣高血圧,および仮面高血圧における無症候性脳病変のリスクについて検討したはじめての研究。仮面高血圧者では,持続性高血圧者と同様に無症候性脳病変のリスクが有意に高くなっていることが示された。一方,白衣高血圧者の無症候性脳病変リスクは,持続性正常血圧者と同等であった。無症候性脳病変のリスクとなる白衣高血圧や仮面高血圧を見逃さないためにも,家庭血圧測定は有用と考えられる。


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