[2012年文献] 家庭SBPとその日間変動は,喫煙経験者でのみ脳梗塞発症リスクと関連する

家庭血圧のパラメータ(家庭収縮期血圧[HSBP]値,およびその日間変動)と喫煙は,脳卒中発症リスクに対して相互作用的に影響を与えるという仮説を検討。日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究における13.1年間(中央値)の追跡の結果,HSBP値,ならびにHSBPの日間変動性は,いずれも脳梗塞発症リスクと有意に関連しており,どちらの指標についても,脳梗塞発症リスクに対する喫煙との有意な相互作用がみとめられた(喫煙経験者でのみ,HSBP高値ならびにHSBPの日間変動性高値と脳梗塞発症リスクが関連)。HSBP値とHSBPの日間変動は,脳卒中死亡リスク増加とも有意に関連していた。これらの結果は,心血管疾患,とくに脳梗塞の予防のための禁煙の重要性を裏付けるものといえる。

Hashimoto T, et al. Home blood pressure level, blood pressure variability, smoking, and stroke risk in Japanese men: the ohasama study. Am J Hypertens. 2012; 25: 883-91.pubmed

コホート
ベースライン健診に参加した35歳以上の大迫町住民2917人のうち,家庭血圧測定値が得られなかった53人,家庭血圧の測定回数が10回未満の425人,脳卒中既往のある114人を除外し,さらに喫煙率が低いことから女性1423人を除外。男性902人を2007年5月31日まで13.1年間(中央値)追跡した。
平均年齢は59歳。

血圧変動については,家庭収縮期血圧の測定値(10回以上)の標準偏差により評価した。
結 果
◇ 対象背景
喫煙未経験者は391人,喫煙経験者は511人(うち禁煙者が94人,現在喫煙者が417人)であった。
喫煙状況(喫煙未経験,禁煙,現在喫煙)による有意な差がみられたのは,年齢(それぞれ60.5歳,62.3歳,56.1歳[P<0.0001]),降圧薬服用率(31.0%,27.7%,21.1%[P=0.006])のみであり,BMI,飲酒率,糖尿病有病率,高脂血症有病率,心疾患既往,家庭収縮期血圧(HSBP)値およびHSBPの日間変動については,有意差はみられなかった。

◇ HSBP値およびその日間変動と心血管疾患発症・死亡リスク
追跡期間中に脳卒中を初発したのは123人で,うち脳梗塞が89人(72%),脳内出血が28人(23%),くも膜下出血が4人(3%),病型不明が2人(2%)であった。
また,死亡した267人のなかで心血管疾患死亡は75人(28.1%)であり,このうち38人(14.2%)が脳卒中死亡,37人(13.9%)が心疾患死亡であった。

HSBP値の1 SD増加は全脳卒中発症(P<0.0001),脳梗塞発症(P<0.0001),全死亡(P=0.03),心血管疾患死亡(P=0.004),および脳卒中死亡(P=0.02)のリスクと,HSBPの日間変動性は脳梗塞発症(P=0.03),脳卒中死亡(P=0.007),脳梗塞死亡(P=0.0006)のリスクとそれぞれ有意に関連していた。

◇ HSBP値およびその日間変動と脳卒中発症率に対する喫煙の影響
(1)HSBP値
喫煙経験者では,HSBP値が高いほど顕著に脳梗塞発症率が高くなっていたが(P for trend<0.0001),喫煙未経験者では関連がゆるやかであった(P for trend=0.01)。
脳出血については,喫煙経験にかかわらず,HSBP値との関連はみられなかった。

(2)HSBPの日間変動
喫煙経験者では,HSBPの日間変動性が大きいほど,有意に脳梗塞発症率が高くなっていたが(P for trend<0.0001),喫煙未経験者では関連はみられず(P for trend=0.2)。
脳出血については,喫煙経験にかかわらず,HSBPの日間変動性との関連はみられなかった。

◇ HSBP値およびその日間変動と脳卒中発症リスクに対する喫煙の影響
(1)HSBP値
HSBP値の1 SD増加ごとの脳卒中および各病型の発症の多変量調整ハザード比(HR)は以下のとおりで,脳梗塞については,HSBP値と喫煙との有意な相互作用がみとめられた(年齢,肥満,飲酒,糖尿病,高脂血症,心血管疾患既往および降圧薬服用で調整)。

・全脳卒中(P for interaction=0.1)
  喫煙未経験者: HR 1.48(95%信頼区間1.05-2.09),P=0.03
  喫煙経験者: HR 1.66(1.32-2.09),P<0.0001
・脳梗塞(P for interaction=0.021)
  喫煙未経験者: HR 1.13(0.73-1.76),P=0.6
  喫煙経験者: HR 1.78(1.39-2.29),P<0.0001
・脳出血(P for interaction=0.6)
  喫煙未経験者: HR 1.83(0.98-3.41),P=0.06
  喫煙経験者: HR 1.18(0.64-2.18),P=0.64

(2)HSBPの日間変動
HSBPの日間変動性の1 SD増加ごとの脳卒中および各病型の発症の多変量調整HRは以下のとおりで,全脳卒中と脳梗塞について,HSBP日間変動性と喫煙との有意な相互作用がみとめられた(年齢,肥満,飲酒,糖尿病,高脂血症,心血管疾患既往,降圧薬服用およびHSBP値で調整)。

・全脳卒中(P for interaction=0.019)
  喫煙未経験者: HR 0.90(0.64-1.27),P=0.6
  喫煙経験者: HR 1.29(1.04-1.60),P=0.02
・脳梗塞(P for interaction=0.017)
  喫煙未経験者: HR 0.91(0.58-1.43),P=0.7
  喫煙経験者: HR 1.38(1.09-1.73),P=0.006
・脳出血(P for inteaction=0.97)
  喫煙未経験者: HR 1.02(0.59-1.76),P=0.96
  喫煙経験者: 0.94(0.47-1.88),P=0.9

喫煙経験者のうち,現在喫煙者のみを対象とした解析を行っても,HSBP値,ならびにHSBPの日間変動と脳梗塞発症リスクとの関連は同様であった。禁煙者のみを対象とした解析は,対象者数が十分ではないため,行えなかった。

◇ HSBP値およびその日間変動と死亡リスクに対する喫煙の影響
HSBP値,ならびにHSBPの日間変動性の1 SD増加と,死因別死亡の多変量調整HRとの関連を喫煙状況ごとに検討した(年齢,肥満,飲酒,糖尿病,高脂血症,心血管疾患既往,降圧薬服用およびHSBP値で調整)。その結果,全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡,脳梗塞死亡,脳出血死亡,心疾患死亡,虚血性心疾患死亡のいずれにおいても,HSBP値と喫煙,およびHSBPの日間変動性と喫煙に有意な相互作用をみとめなかった。

◇ 結論
家庭血圧のパラメータ(家庭収縮期血圧[HSBP]値,およびその日間変動)と喫煙は,脳卒中発症リスクに対して相互作用的に影響を与えるという仮説を検討。日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究における13.1年間(中央値)の追跡の結果,HSBP値,ならびにHSBPの日間変動は,いずれも脳梗塞発症リスクと有意に関連しており,どちらの指標についても,脳梗塞発症リスクに対する喫煙との有意な相互作用がみとめられた(喫煙経験者でのみ,HSBP高値ならびにHSBPの日間変動性高値と脳梗塞発症リスクが関連)。HSBP値とHSBPの日間変動は,脳卒中死亡リスク増加とも有意に関連していた。これらの結果は,心血管疾患,とくに脳梗塞の予防のための禁煙の重要性を裏付けるものといえる。


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