[2014年文献] 家庭SBPによる日間変動と認知機能低下リスクが関連

日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,家庭血圧値を用いた場合の血圧値ならびに血圧変動性と認知機能低下リスクとの関連を,随時血圧と比較した。7.8年間の追跡の結果,家庭血圧値は随時血圧値よりも認知機能低下リスクとの関連が強いこと,ならびに,家庭収縮期血圧の標準偏差は,家庭収縮期血圧値そのものとは独立して認知機能低下リスクと有意に関連することが示された。以上のように,家庭血圧測定からは血圧の日間変動に関する情報も得られるため,認知機能低下リスクの予測に有用であると考えられる。

Matsumoto A, et al. Day-to-Day Variability in Home Blood Pressure Is Associated With Cognitive Decline: The Ohasama Study. Hypertension. 2014; pubmed

コホート
ベースライン健診を受診し,研究参加に同意した1436人のうち,認知機能低下(MMSE[mini-mental state examination]スコア<24)のない485人を7.8年間追跡(中央値)。

4週間にわたり実施された家庭血圧(毎朝1回)の測定値の平均を家庭血圧値とし,収縮期血圧(SBP)および拡張期血圧(DBP)のそれぞれについて,対象者を以下のように三分位に分類した。
  [家庭SBP値]T1: <117.6 mmHg,T2: 117.6~129.5 mmHg,T3: >129.5 mmHg
  [家庭DBP値]T1: <71.9 mmHg,T2: 71.9~79.3 mmHg,T3:>79.3 mmHg

また,家庭血圧測定値の日間変動性として,SBPおよびDBPそれぞれの標準偏差(SD)について,対象者を以下のように三分位に分類した。
  [家庭SBPのSD]T1: <7.3 mmHg,T2: 7.3~9.6 mmHg,T3: >9.6 mmHg
  [家庭DBPのSD]T1: <4.7 mmHg,T2: 4.7~6.0 mmHg,T3: >6.0 mmHg

認知機能低下は,MMSEスコア<24と定義。
結 果
◇ 対象背景
平均年齢63歳。
追跡期間中に認知機能低下がみられたのは46人(9.5%)。

追跡時に認知機能低下がみられた人では,みられなかった人にくらべ,男性の割合,過去の心血管疾患既往の割合,教育年数10年未満の割合,ベースライン時MMSEスコア27未満の割合,追跡期間中のMMSEスコア低下幅,追跡年数,家庭収縮期血圧(SBP)値,家庭SBPの標準偏差(SD)が有意に高く,家庭拡張期血圧(DBP)のSDが有意に低かった。

◇ 家庭血圧値,ならびに家庭血圧の変動性と認知機能低下リスク
家庭血圧値,ならびに家庭血圧のSDの三分位ごとの認知機能低下の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)は以下のとおりで(それぞれT1,T2,T3の値),家庭SBP値,ならびに家庭SBPのSDが大きいほど,認知機能低下のリスクが有意に高い傾向がみとめられたが,DBPについては有意な傾向はみられなかった(性別,年齢,心血管疾患既往,教育年数<10年,ベースライン時MMSEスコア<27,および追跡年数により調整,*P<0.05)。随時血圧値についてみると,SBP,DBPとも認知機能低下との有意な関連はみられなかった。

 [家庭SBP値]T1: 1(対照),T2: 2.14(0.81-5.67),T3: 2.67(1.04-6.83)*,P for trend=0.046
 [家庭DBP値]1,1.12(0.44-2.84),2.07(0.85-5.04),P for trend=0.09
 [家庭SBPのSD]1,2.04(0.78-5.32),2.72(1.06-6.95)*,P for trend=0.04
 [家庭DBPのSD]1,1.89(0.73-4.90),2.17(0.87-5.43),P for trend=0.1

家庭SBP・DBP,随時SBP・DBP,ならびに家庭SBP・DBPのSDをそれぞれ連続変数として扱った解析を行った結果,家庭SBPおよび家庭DBPの1 SD増加はそれぞれ認知機能低下のリスクと有意に関連したが(多変量調整オッズ比: SBP 1.48,DBP 1.44,いずれもP<0.05),随時SBPおよび随時DBPについては有意な関連はなかった。
家庭SBPのSDの1 SD増加は,家庭SBP値を含めた解析でも認知機能低下のリスクと有意に関連していたが(多変量調整オッズ比1.51,P=0.02),この解析における家庭SBP値と認知機能低下リスクとの関連は有意ではなかった(1.30,P=0.2)。家庭DBPのSDの1 SD増加と認知機能低下リスクとの有意な関連はなかった。

◇ 降圧薬服用の有無ごとの層別化解析
家庭SBP値と認知機能低下リスクとの関連,ならびに随時SBP値と認知機能低下リスクとの関連は,それぞれ降圧薬非服用者においてのみ有意であった(非服用者における多変量調整オッズ比は,家庭SBP値1 SD増加あたり2.80[95%信頼区間1.55-5.07],随時SBP値1 SD増加あたり1.77[1.08-2.89])。家庭SBPのSDと認知機能低下リスクとの関連については,降圧薬服用者と非服用者で同様であった。
家庭DBP値と認知機能低下リスクとの関連は,降圧薬非服用者においてのみ有意であった(1 SD増加あたりの多変量調整オッズ比2.82[1.51-5.27])。随時DBP値,ならびに家庭DBPのSDと認知機能低下リスクとの関連については,降圧薬服用者と非服用者で同様であった。

非治療の正常血圧者(家庭血圧により診断)に比して,治療中の高血圧者,ならびに非治療の高血圧者ではいずれも,認知機能低下の多変量調整オッズ比が有意に高かった。

◇ 家庭SBP+家庭SBPのSDの組み合わせと認知機能低下リスク
家庭SBPの中央値(124.7 mmHg未満/以上)および家庭SBPのSDの中央値(8.55 mmHg未満/以上)の組み合わせにより,対象者を4つのグループに分けて認知機能低下の多変量調整オッズ比(95%信頼区間)を比較した結果は以下のとおりで(*P<0.05),家庭SBP高値かつ家庭SBPのSDが大きいのグループでもっともリスクが高くなっていた。
  家庭SBP低値+家庭SBPのSD小: 1(対照)
  家庭SBP高値+家庭SBPのSD小: 2.79(0.80-9.76)
  家庭SBP低値+家庭SBPのSD大: 4.89(1.44-16.7)*
  家庭SBP高値+家庭SBPのSD大: 6.40(2.11-19.4)*


◇ 結論
日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,家庭血圧値を用いた場合の血圧値ならびに血圧変動性と認知機能低下リスクとの関連を,随時血圧と比較した。7.8年間の追跡の結果,家庭血圧値は随時血圧値よりも認知機能低下リスクとの関連が強いこと,ならびに,家庭収縮期血圧の標準偏差は,家庭収縮期血圧値そのものとは独立して認知機能低下リスクと有意に関連することが示された。以上のように,家庭血圧測定からは血圧の日間変動に関する情報も得られるため,認知機能低下リスクの予測に有用であると考えられる。


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