[2014年文献] パーソナリティと高次生活機能低下のリスク

基本的な日常生活動作(ADL)に問題のない,高齢の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,日本版アイゼンク性格検査(EPQ-R)で評価したパーソナリティの4つの尺度(外向性傾向,神経症傾向,非協調性傾向および社会的望ましさ指向)と,将来の高次生活機能の低下リスクとの関連を検討した。7年間の追跡の結果,非協調性傾向が強いと高次生活機能低下のリスクが高いこと,ならびに,外向性傾向が強いほど高次生活機能低下のリスクが低いことが示された。

Tsubota-Utsugi M, et al. Personality Traits as Predictors of Decline in Higher-Level Functional Capacity over a 7-Year Follow-Up in Older Adults: The Ohasama Study. Tohoku J Exp Med. 2014; 234: 197-207.pubmed

コホート
1998年2月1日~3月28日に健診を受診した60歳以上の2348人(参加率89.8%)のうち,質問票への回答に不備のあった372人,基本的な日常生活動作(ADL)を独立して行えない334人,高次生活機能(higher-level functional capacity)レベルが低い(老研式活動能力指標[Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology Index of Competence: TMIG]<10点)309人を除いたうえで,日本版アイゼンク性格検査(Eysenck Personality Questionnaire-Revised: EPQ-R)に回答した839人(回答率62.9%)を2005年まで7年間追跡。
追跡期間中に死亡した80人,転居した17人,および追跡健診への参加を拒否した66人を除いた676人(男性40.9%,平均年齢67.5歳)を解析対象とした。

パーソナリティについては, EPQ-Rを用いて以下の4つの尺度(それぞれ最低0点~最高12点,高得点ほど強い傾向)の評価を行った。
外向性傾向(extraversion): 社会的,元気,活動的など
神経症傾向(neuroticism): 感情が不安定,心配性など
非協調性傾向(psychoticism): 意志が強い,攻撃的,冷たい,自己中心的など
社会的望ましさ指向(lie): 社会的に望ましい・よい状況に見せかける,社会的に未熟あるいは慣習・通例に従うなど

高次生活機能の評価にはTMIGを用い,7年後の追跡健診時とベースライン時のスコアの比較により,「低下(2点以上の減少)」「低下なし(1点減少,不変,または改善)」のいずれかに対象者を分類した。

手段的ADL(instrumental ADL,5点満点),知的活動(intellectual activity: 4点満点),社会的役割(social role,4点満点)の3つのサブスケールの合計(13点満点)で評価し,高得点ほど活動能力が高いことを示す。
結 果
◇ 対象背景
パーソナリティの各尺度のスコアの平均は,外向性傾向6.5点,神経症傾向5.4点,非協調性傾向3.1点であった。

追跡期間中の高次生活機能の低下がみられたのは147人(21.7%)。
サブスケールについてみると,手段的ADLの低下は123人(18.2%),知的活動の低下は61人(9.0%),社会的役割の低下は64人(9.5%)であった。
これらの低下の状況に,男女差はみとめられなかった。

パーソナリティの各尺度について,それぞれのスコアの四分位によるカテゴリー間でおもな背景因子を比較した結果は以下のとおり。
・外向性傾向: Q4(傾向が強い)では,Q1に比して喫煙率が高く,週3時間以上の身体活動の割合が高く,睡眠時間が長く,自覚的な健康度が高く,欠食が少なく,サプリメントの使用率が低く,高次生活機能スコア,および社会的役割のスコアが高かった。
・非協調性傾向: Q4では,Q1に比して男性が多く,喫煙率が高く,アルコール摂取量が多く,朝食を抜く割合が高く,高次生活機能スコア,および社会的役割のスコアが低かった。
・神経症傾向: Q4では,Q1に比して自覚的健康度が低く,サプリメントの使用率が高かった。

◇ パーソナリティと高次生活機能低下リスク
・外向性傾向
高次生活機能低下のリスクは,Q4(対照)にくらべ,Q1(外向性傾向が弱い,すなわち内向的)で有意に高くなっていた(多変量調整オッズ比1.89[95%信頼区間1.01-3.56]; P=0.047)(年齢,学歴,高脂血症および聴覚障害の既往,睡眠時間,外食の頻度,およびBMIで調整)。
また,スコアを連続変数として扱った解析においても,外向性傾向スコアが高いほど高次生活機能低下のリスクが低下する,有意な関連がみられた(+1点に伴う多変量調整オッズ比0.80[0.66-0.97]; P=0.023)。

高次生活機能低下のサブスケールについてみると,外向性傾向スコアが高いほど,手段的ADL低下のリスク,および社会的役割低下のリスクが低下する有意な関連がみられた(+1点に伴う多変量調整オッズ比: それぞれ 0.78[0.63-0.96]; P=0.019,0.60[0.45-0.79]; P<0.001)。

・神経症傾向
高次生活機能低下,およびそのサブスケールとの有意な関連はみられなかった。

・非協調性傾向
高次生活機能低下のリスクは,Q1(対照)にくらべ,Q4で有意に高くなっていた(多変量調整オッズ比2.12[1.23-3.66]; P=0.007)。
また,スコアを連続変数として扱った解析においても,神経症傾向スコアが高いほど高次生活機能低下のリスクが増加する,有意な関連がみられた(+1点に伴う多変量調整オッズ比1.25[1.06-1.49]; P=0.012)。

高次生活機能低下のサブスケールについては,非協調性傾向スコアとの有意な関連はみとめられなかった。

・社会的望ましさ指向
高次生活機能低下,およびそのサブスケールとの有意な関連はみられなかった。

以上の結果は,ベースライン時にTMIGスコアが満点であった(高次生活機能にまったく問題がなかった)人のみで行った解析,および,身体活動の頻度や各パーソナリティ尺度に関連する因子による調整を行った解析でも,ほぼ同様であった。


◇ 結論
基本的な日常生活動作(ADL)に問題のない,高齢の日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,日本版アイゼンク性格検査(EPQ-R)で評価したパーソナリティの4つの尺度(外向性傾向,神経症傾向,非協調性傾向および社会的望ましさ指向)と,将来の高次生活機能の低下リスクとの関連を検討した。7年間の追跡の結果,非協調性傾向が強いと高次生活機能低下のリスクが高いこと,ならびに,外向性傾向が強いほど高次生活機能低下のリスクが低いことが示された。


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