[2008年文献] 魚,およびω-3多価不飽和脂肪酸の摂取は心血管疾患死亡リスクを低下させる

日本人一般住民を対象とした約13年間の大規模コホート研究により,魚の摂取,およびω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取と心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。その結果,魚の摂取,およびω-3 PUFAの摂取は,いずれも心血管疾患死亡リスクと有意な負の関連を示し,とくにω-3 PUFAと心不全死亡との関連が顕著だった。以上の結果から,魚の摂取が心血管疾患に対して予防的な効果をもたらす可能性が示唆される。

Yamagishi K, et al.; Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk Study Group. Fish, omega-3 polyunsaturated fatty acids, and mortality from cardiovascular diseases in a nationwide community-based cohort of Japanese men and women the JACC (Japan Collaborative Cohort Study for Evaluation of Cancer Risk) Study. J Am Coll Cardiol. 2008; 52: 988-96.pubmed

コホート
国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110,792人のうち,心疾患,脳卒中または癌の既往のある人,および魚の摂取量に関するデータに不備がある人を除いた57,972人(男性22,881人,女性35,091人)を2003年まで平均12.7年間追跡(追跡人・年は735,905人・年)。

魚の摂取量については,食物摂取頻度調査票(FFQ: food frequency questionnaire)により,4つの項目(鮮魚,かまぼこ類,干物類,揚げた魚・天ぷら類)の摂取頻度をたずね,摂取頻度と標準的な単位摂取量をかけあわせ,4つの項目の値を合計して1日の摂取量(g)とした。
また,以前の検証研究から,各項目の単位摂取量あたりに含まれるω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA: polyunsaturated fatty acid)の量が得られているため,摂取頻度からω-3 PUFAの摂取量を算出して合計したものを1日の摂取量(g)とした。
結 果
◇ 対象背景
魚の摂取量,およびω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA: polyunsaturated fatty acid)の五分位(エネルギーにより調整)の摂取量の五分位は以下のとおりとなった。
   1日の魚の摂取量 0~27 g,27~39 g,39~53 g,53 ~72 g,72~229 g
   1日のω-3 PUFAの摂取量: 0.05~1.18 g,1.18~1.47 g,1.47~1.75 g,1.75~2.11 g,2.11~5.06 g

年齢,BMI,喫煙率,アルコール摂取量,糖尿病既往,精神的ストレス,および種々の栄養素の摂取状況は,いずれも魚の摂取量と関連を示していた。また,この結果はω-3 PUFA摂取量についても同様だった。

◇ 魚の摂取と心血管疾患死亡リスク
追跡期間中の死亡は7,008人で,内訳は以下のとおりとなった。
  全心血管疾患死亡: 2,045人
   虚血性心疾患: 419人
    (うち心筋梗塞:329人)
   心停止: 107人
   心不全: 307人
   脳卒中: 972人
    (うち脳梗塞319人,脳出血223人,くも膜下出血153人)

魚の摂取量の五分位ごとに死因別死亡リスクを比較した結果,摂取量が多いほど,心筋梗塞死亡リスク,および全心血管疾患死亡リスクが有意に低下していた。

全心血管疾患死亡リスクについては,多変量調整後も魚の摂取量と有意な負の関連がみとめられた(P for trend=0.007)。魚の摂取量がもっとも多い五分位(1日72~229 g)における全心血管疾患死亡のハザード比(vs. 0~27 g)は0.82(95 %信頼区間0.71-0.95)。
一方,心筋梗塞については多変量調整を行うと有意な関連は消失した。

◇ ω-3 PUFA摂取と心血管疾患死亡リスク
ω-3 PUFA摂取量の五分位ごとに死因別死亡リスクを比較した結果,摂取量が多いほど,心筋梗塞死亡リスク,脳出血死亡リスク,全心血管疾患死亡リスク,および全死亡リスクが有意に低下していた。

全心血管疾患死亡リスクについては,多変量調整後もω-3 PUFAと有意な負の関連がみとめられた(P for trend=0.01)。ω-3 PUFA摂取量がもっとも多い五分位(1日2.11~5.06 g)における全心血管疾患死亡のハザード比(vs. 0.05~1.18 g)は0.81(95 %信頼区間0.67-0.98)。
心筋梗塞,脳出血,全死亡については多変量調整を行うと有意な関連は消失したが,心不全死亡について,多変量調整後にω-3 PUFA摂取量との有意な負の関連がみとめられた(P for trend=0.03)。ω-3 PUFA摂取量がもっとも多い五分位(1日2.11~5.06 g)における心不全死亡のハザード比(vs. 0.05~1.18 g)は0.58(95 %信頼区間0.36-0.93)。

以上の結果に,顕著な性差はみとめられなかった。

◇ 結論
日本人一般住民を対象とした約13年間の大規模コホート研究により,魚の摂取,およびω-3多価不飽和脂肪酸(PUFA)の摂取と心血管疾患死亡リスクとの関連を検討した。その結果,魚の摂取,およびω-3 PUFAの摂取は,いずれも心血管疾患死亡リスクと有意な負の関連を示し,とくにω-3 PUFAと心不全死亡との関連が顕著だった。以上の結果から,魚の摂取が心血管疾患に対して予防的な効果をもたらす可能性が示唆される。


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