[2008年文献] 多量の飲酒は,男性の脳卒中死亡,女性の冠動脈疾患死亡のリスク

日本人の男女それぞれにおける飲酒量と脳卒中,脳卒中の各病型,および冠動脈疾患による死亡リスクとの関連について,約10年間の大規模コホート研究による検討を行った。その結果,多量の飲酒は,男性で脳卒中(とくに脳出血)死亡および全心血管疾患死亡リスク,女性で冠動脈疾患死亡リスクの増加とそれぞれ有意に関連していた。男女とも,少量~中程度の飲酒は心血管疾患死亡リスクの低下と関連していた。

Ikehara S, et al.; Japan Collaborative Cohort Study Group. Alcohol consumption and mortality from stroke and coronary heart disease among Japanese men and women: the Japan collaborative cohort study. Stroke. 2008; 39: 2936-42.pubmed

コホート
国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110,792人のうち,飲酒に関するデータに不備がある22,358人,および癌,脳卒中,心筋梗塞既往のある4,752人を除いた83,682人(男性34,776人,女性48,906人)を14.2年間(中央値)追跡。
追跡人・年は106万5,295人・年。

問診により飲酒習慣についてたずね,全体を「飲酒未経験者」「禁酒者」「飲酒者」に分類した。
禁酒者,飲酒者には,飲酒開始年齢,1週間の飲酒頻度,酒の種類,1回あたりの飲酒量をたずねた。
結 果
◇ 対象背景
ベースライン時の飲酒状況は以下のとおり。
   飲酒未経験者: 男性22 %,女性83 %
   禁酒者: 7 %,2 %
   飲酒者: 71 %,15 %

男女とも,飲酒未経験者にくらべて中程度~多量飲酒者は年齢が低く,高血圧が多く,喫煙率が高く,魚の摂取頻度が高く,果物の摂取頻度が低い傾向がみとめられた。

◇ 飲酒状況と心血管疾患死亡リスク
心血管疾患による死亡および1000人あたりの年間死亡率は以下のとおり。
   脳卒中死亡: 男性864人[1000人あたりの年間死亡率2.0],女性764人[1.2]
   冠動脈疾患死亡: 431人[1.0],305人[0.5]

・ 男性
男性では,1日のエタノール換算アルコール摂取量が46.0 g以上の多量飲酒者において,全脳卒中死亡,出血性脳卒中死亡,脳出血死亡,虚血性脳卒中死亡の有意な増加(vs. 飲酒未経験者)がみとめられた。

飲酒状況と各心血管疾患による死亡の多変量調整ハザード比は以下のとおり(それぞれ飲酒未経験者[対照],禁酒者,少量~中程度飲酒者[1日のエタノール換算アルコール摂取量0.1~45.9 g],多量飲酒者[46.0 g以上]の値)。
   全心血管疾患死亡: 1.00,1.66(1.43-1.93),0.88(0.78-1.00),1.13(0.99-1.29)
   虚血性心血管疾患死亡: 1.00,1.71(1.39-2.12),0.89(0.75-1.05),1.07(0.88-1.29)
   全脳卒中死亡: 1.00,1.90(1.52-2.39),0.96(0.79-1.15),1.48(1.22-1.80)
    出血性脳卒中死亡: 1.00,1.79(1.15-2.80),1.08(0.76-1.53),1.67(1.17-2.38)
      脳出血死亡: 1.00,2.00(1.22-3.30),1.09(0.73-1.63),1.62(1.07-2.45)
      くも膜下出血死亡: 1.00,1.16(0.41-3.26),1.05(0.52-2.09),1.83(0.93-3.61)
    虚血性脳卒中死亡: 1.00,2.11(1.59-2.78),0.89(0.70-1.13),1.35(1.04-1.75)
   冠動脈疾患死亡: 1.00,1.35(0.97-1.86),0.88(0.69-1.13),0.81(0.61-1.08)

・ 女性
女性では,1日のエタノール換算アルコール摂取量が46.0 g以上の多量飲酒者において,虚血性心血管疾患死亡および冠動脈疾患死亡リスクの増加(vs. 飲酒未経験者)がみとめられた。
一方,0.1~22.9 gの少量飲酒者では,全心血管疾患死亡リスクの有意な低下がみとめられた。

飲酒状況と各心血管疾患による死亡の多変量調整ハザード比は以下のとおり(それぞれ飲酒未経験者[対照],禁酒者,少量飲酒者[1日のエタノール換算アルコール摂取量0.1~22.9 g],中程度飲酒者[23.0~45.9 g],多量飲酒者[46.0 g以上]の値)。
   全心血管疾患死亡: 1.00,0.82(057-1.18),0.74(0.60-0.91),0.81(0.53-1.24),1.73(0.97-3.08)
   虚血性心血管疾患死亡: 1.00,0.86(0.50-1.48),0.81(0.59-1.11),0.87(0.45-1.68),3.29(1.61-6.73)
   全脳卒中死亡: 1.00,0.87(0.51-1.48),0.87(0.65-1.15),0.59(0.28-1.24),1.92(0.85-4.35)
    出血性脳卒中死亡: 1.00,0.95(0.42-2.17),0.84(0.55-1.29),0.52(0.17-1.64),1.61(0.50-5.19)
    虚血性脳卒中死亡: 1.00,0.87(0.42-1.78),0.78(0.51-1.21),0.36(0.09-1.44),2.43(0.77-7.69)
   冠動脈疾患死亡: 1.00,0.85(0.38-1.94),0.83(0.53-1.33),1.45(0.68-3.11),4.10(1.63-10.3)


◇ 結論
日本人の男女それぞれにおける飲酒量と脳卒中,脳卒中の各病型,および冠動脈疾患による死亡リスクとの関連について,約10年間の大規模コホート研究による検討を行った。その結果,多量の飲酒は,男性で脳卒中(とくに脳出血)死亡および全心血管疾患死亡リスク,女性で冠動脈疾患死亡リスクの増加とそれぞれ有意に関連していた。男女とも,少量~中程度の飲酒は心血管疾患死亡リスクの低下と関連していた。


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