[2009年文献] 高齢者でも健康的な生活習慣の数が多いほど死亡リスクが低下

過去の疫学研究の報告に基づいた6つの健康的な生活習慣の組み合わせと全死亡リスクとの関連について,日本人一般住民約6万人を対象とした大規模コホート研究における検討を行い,人口寄与割合の算出も行った。12.5年間の追跡の結果,性・年齢を問わず,健康的な生活習慣の数が多いほど全死亡リスクが直線的に低下することが示された。また,健康的な生活習慣を1つでも増やすことができれば,男性では24.7%,女性では18.5%の死亡が防げると推算された。これらの結果より,若年者のみならず高齢者においても,生活習慣を改善することの重要性が示唆されたといえる。

Tamakoshi A, et al.; JACC Study Group. Healthy lifestyle and preventable death: findings from the Japan Collaborative Cohort (JACC) Study. Prev Med. 2009; 48: 486-92.pubmed

コホート
国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110792人のうち,生活習慣に関するデータに不備のない62106人(男性27582人,女性34524人)を,2003年まで平均12.5年間追跡。

過去の報告に基づき,以下の6つを健康的な生活習慣とし,それぞれの対象者について該当する数を「健康的な生活習慣スコア」(0~6点: 高いほど健康的)とした。
 ・非喫煙または禁煙
 ・非飲酒または1回1合以内の飲酒
 ・1日1時間以上の歩行
 ・睡眠時間6.5~7.4時間
 ・緑色葉野菜をほぼ毎日摂取
 ・BMI 18.5~24.9 kg/m2
結 果
◇ 対象背景
健康的な生活習慣のスコア低値では,高値にくらべて年齢が低く,大学卒業以上の学歴をもつ割合が低く,自覚的ストレスの割合が高く,配偶者をもつ割合が低く,毎日朝食を食べる割合が低かった。
女性では,健康的な生活習慣スコアが高いほど,脳卒中・心筋梗塞・癌の既往の割合が低かったが,男性では逆の傾向がみられた。

◇ 健康的な生活習慣スコアと心血管疾患死亡リスク
追跡期間中に死亡したのは8497人(1000人あたり死亡率136.8,男性5285人,女性3212人)。
循環器疾患による死亡は男性で27.9%,女性で32.7%を占めていた。

健康的な生活習慣スコアごとの全死亡の多変量調整ハザード比*(95%信頼区間)は以下のとおりで,男女とも健康的な生活習慣が3つ以上の人で,0~2の人に比した有意なリスク低下がみられるとともに,スコアが高いほどリスクが低くなる有意な傾向がみとめられた(*年齢層,教育,ストレス,婚姻状況,緑色葉野菜の摂取,脳卒中・心筋梗塞・癌の既往歴により調整)。
・男性(P for trend<0.0001)
  0~2: 1.00(対照)
  3: 0.80(0.75-0.86)
  4: 0.72(0.67-0.77)
  5: 0.58(0.52-0.65)
  6: 0.43(0.32-0.58)

・女性(P for trend<0.0001)
  0~2: 1.00(対照)
  3: 0.82(0.73-0.92)
  4: 0.70(0.63-0.79)
  5: 0.58(0.50-0.66)
  6: 0.53(0.43-0.66)

この結果は,年齢層(40歳以上60歳未満/60歳以上80歳未満)ごとの解析,ならびにベースラインから2年以内に脳卒中・心筋梗塞・癌を発症した人を除外した解析でも同様であった。

健康的ではない生活習慣の全死亡に対する人口寄与割合(もし全員が6つの健康的な生活習慣をすべて実施することができれば防げた死亡の割合)は男性で49.4%,女性で29.8%であった。
また,健康的な生活習慣1つあたりの全死亡に対する人口寄与割合(6点満点の人を除いた全員が健康的な生活習慣を1つ増やすことができれば防げた死亡の割合)は男性で24.7%,女性で18.5%であった。


◇ 結論
過去の疫学研究の報告に基づいた6つの健康的な生活習慣の組み合わせと全死亡リスクとの関連について,日本人一般住民約6万人を対象とした大規模コホート研究における検討を行い,人口寄与割合の算出も行った。12.5年間の追跡の結果,性・年齢を問わず,健康的な生活習慣の数が多いほど全死亡リスクが直線的に低下することが示された。また,健康的な生活習慣を1つでも増やすことができれば,男性では24.7%,女性では18.5%の死亡が防げると推算された。これらの結果より,若年者のみならず高齢者においても,生活習慣を改善することの重要性が示唆されたといえる。


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