[2010年文献] 食事からの葉酸およびビタミンB6の摂取量が多いほど,心血管疾患死亡リスクが減少する

日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究により,米国や欧州と同じように,日本人においても,葉酸とビタミンB6 の摂取量が多いほど脳卒中,CHDおよび心不全による死亡リスクが減少することが示された。

Cui R, et al.; for the Japan Collaborative Cohort Study Group. Dietary Folate and Vitamin B6 and B12 Intake in Relation to Mortality From Cardiovascular Diseases. Japan Collaborative Cohort Study. Stroke. 2010; 41: 1285-9. pubmed

コホート
JACC Study
国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110792人のうち,食事摂取頻度調査票(FFQ:food frequency questionnaire)のデータに不備のない男性24386人,女性37493人から心血管疾患既往(2294人),癌の既往(855人)を除いた男性23119人,女性35611人を14年間(中央値)追跡。

『五訂日本食品標準成分表』から各栄養素の1日あたりの摂取量を算出。葉酸とビタミンB6については残差モデルを用いて男女別に総摂取エネルギーによる調整を行い,それぞれの摂取量により,全体を五分位に分けて解析を行った。
 葉酸(μg/日):<272,272~351,352~430,431~535,≧536
 ビタミンB6(mg/日):<0.79,0.79~0.96,0.97~1.11,1.12~1.32,≧1.33
 ビタミンB12(μg/日):<4.5,4.5~5.9,6.0~7.6,7.7~9.8,≧9.9
結 果
◇ 対象背景
ベースライン時の葉酸,ビタミンB6およびビタミンB12それぞれの摂取量ごとに背景を比較すると,男女どちらにおいても,それぞれの摂取量が多いカテゴリーほど,魚を食べる頻度が高く,飽和脂肪酸・n-3脂肪酸・n-6脂肪酸の摂取量が高く,摂取エネルギー量が多かった。男性では,アルコール摂取量も多くなっていた。

追跡期間中の死亡は以下のとおり。
心血管疾患(CVD)死亡:2087人(男性1066人,女性1021人)
 脳卒中死亡:986人(500人,486人)
 冠動脈疾患(CHD)死亡:424人(233人,191人)
 心不全死亡:318人(151人,167人)

◇ 葉酸,ビタミンB6およびビタミンB12摂取量と心血管疾患死亡リスク
葉酸およびビタミンB6の摂取量は,男性において心不全死亡リスク,女性において,CHDならびに全CVD死亡リスクと有意な負の関連を示した(いずれも年齢調整後)。これらの関連はCVD危険因子で調整後も変わらなかった。また,マルチビタミンサプリメント服用者(7334人)を除外しても変わらなかった。ビタミンB12の摂取量と死亡リスクに関連はみられなかった。

年齢調整ハザード比(95%信頼区間),対照(各最小五分位: 1.00)
・心不全死亡
  男性(葉酸摂取量最大五分位):0.54(0.31-0.92),P=0.02
  男性(ビタミンB6摂取量最大五分位):0.53(0.31-0.89),P=0.02
・CHD死亡
  女性(葉酸摂取量最大五分位):0.46(0.29-0.72),P<0.001
  女性(ビタミンB6摂取量最大五分位):0.46(0.30-0.71),P<0.001
・CVD死亡
  女性(葉酸摂取量最大五分位):0.74(0.61-0.89),P=0.001
  女性(ビタミンB6摂取量最大五分位):0.68(0.56-0.82),P<0.001
  
多変量調整ハザード比(95%信頼区間),対照(各最小五分位: 1.00)
・心不全死亡
  男性(葉酸摂取量最大五分位):0.50(0.27-0.94),P=0.03
・CHD死亡
  女性(葉酸摂取量最大五分位):0.57(0.34-0.96),P=0.03
 

◇ 結論
日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究により,米国や欧州と同じように,日本人においても,葉酸とビタミンB6 の摂取量が多いほど脳卒中,CHDおよび心不全による死亡リスクが減少することが示された。


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