[2012年文献] 塩辛いものが好きな人は脳卒中死亡リスクが高い

中年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究により,塩分摂取量ではなく,塩分嗜好と脳卒中死亡リスクとの関連を検討した初めての研究。その結果,塩分嗜好が低い群にくらべ高い群の方が脳卒中死亡リスクが20%高くなることが示された。

Ikehara S, et al.; JACC Study Group. Salt preference and mortality from stroke and coronary heart disease for Japanese men and women: the JACC study. Prev Med. 2012; 54: 32-7.pubmed

コホート
国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110792人のうち,心血管疾患,癌の既往のある5864人,塩分嗜好情報のない20138人を除いた84790人(男性35515人,女性49275人)を16.4年間(中央値)追跡。

塩辛い食品(塩づけの魚,煮物,漬け物)を好む度合いを5段階(嫌い/好まない/どちらでもない/好む/大変好む)で質問し,結果をもとに対象者を塩分嗜好「低(嫌い/好まない)」「中程度(どちらでもない)」「高(好む/大変好む)」のカテゴリーに対象者を分類。また,食事摂取頻度調査票(FFQ:food frequency questionnaire)のデータに不備のない人を対象に,各栄養摂取量を計算した(n=55342)。
結 果
◇対象背景
ベースライン時の塩分嗜好が「低」の人は男性4328人,女性9174人,「中程度」の人は16239人,27081人,「高」の人は14948人,13020人であった。
ベースライン時,塩分嗜好の低い人とくらべて,高い人の方が若く,教育水準が低く,喫煙率,BMI値が高く,アルコール摂取量が多かった。塩分嗜好の高い群では,男女ともに,ナトリウム,その他の栄養パラメーター(カリウム,蛋白質,カルシウム,飽和脂肪酸,一価不飽和脂肪酸,多価不飽和脂肪酸,n-3脂肪酸,総食物繊維,ビタミンB6,コレステロール),塩辛い食品の摂取頻度の平均値が高かった。

追跡期間中の死亡は以下のとおり。
心血管疾患(CVD)死亡:4417人(男性2318人,女性2099人)
 脳卒中死亡:1970人(1023人,947人)
 冠動脈疾患(CHD)死亡:922人(543人,379人)
死亡率(1000人・年あたり)は以下のとおり。
CVD:3.6(男性4.6,女性2.9)
 脳卒中:1.6(2.0,1.3)
 CHD:0.8(1.1,0.5)

◇塩分嗜好と脳卒中
塩分嗜好は,男女ともに脳卒中死亡の増加と関連した。
塩分嗜好「高」の群の,「低」と比較した脳卒中死亡の多変量調整ハザード比は,全体1.23(1.06-1.41,性別調整後),男性1.21(0.99-1.49),女性1.22(1.00-1.49)であった。CHD死亡については塩分嗜好「中程度」の群と「高」の群で「低」に比してリスクが減少する傾向がみられたが,男性,女性,全体のいずれでも統計学的に有意な差はみられなかった。

FFQにより塩分摂取量の推計が可能だった人のみを対象とした解析においても,以下のように塩分嗜好と脳卒中死亡リスクとの有意な関連がみとめられ,さらに塩分摂取量で調整を行っても,関連がやや弱まったものの同様の結果であった。
・脳卒中死亡の多変量調整ハザード比(95%信頼区間)
  低: 1.00(対照)
  中程度: 1.32(1.09-1.58)
  高: 1.37(1.13-1.66)
  P for trend=0.005

・さらに塩分摂取量で調整した場合
  低: 1.00(対照)
  中程度: 1.28(1.06-1.54)
  高: 1.32(1.08-1.60)
  P for trend=0.01

◇塩分嗜好とアルコール摂取の相互作用
アルコール摂取状況のカテゴリー(まったく飲まない/以前飲んでいた/現在飲んでいる/飲む[0.1~45.9g/日]/かなり飲む[46.0g/日])と塩分嗜好とを組み合わせて解析した結果,男性では「塩分嗜好:高」+「かなり飲む」群,女性では「塩分嗜好:高」+「以前飲んでいた」群において,「塩分嗜好:低」+「まったく飲まない」群に比して脳卒
中死亡リスクが高い傾向がみられた。ただし,「かなり飲む」人(とくに男性)においては,塩分嗜好にかかわらず脳卒中死亡リスクが高かった。

◇結論
中年の日本人一般住民を対象とした大規模前向きコホート研究により,塩分摂取量ではなく,塩分嗜好と脳卒中死亡リスクとの関連を検討した初めての研究。その結果,塩分嗜好が低い群にくらべ高い群の方が脳卒中死亡リスクが20%高くなることが示された。


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