[2020年文献] 20歳時点から体重が大きく変化した人は将来的に心血管疾患死亡リスクが高くなる

体重の変動は,増加,減少ともに心血管疾患(CVD)の危険因子であることが知られている。しかし,体重の変動とCVDに関する多くの研究は欧米からの報告であった。そこで,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,20歳時点からベースライン時までの体重の変化と,CVD死亡リスクとの関連を検討した。その結果,体重が安定していた人(2.5 kg以内)に比して,大きく増減した人(12.5 kg以上)では全CVD死亡リスクおよび虚血性心疾患死亡リスクが高く,U字型の関連がみられた。また,体重が大きく減少した人では脳内出血死亡リスクが高かった。体重の大きな変化は,全CVD死亡ならびに虚血性心疾患死亡,また体重の大きな減少は脳内出血死亡の危険因子となることが示唆された。

Okada C, et al. Weight Change and Mortality from Cardiovascular Diseases: The Japan Collaborative Cohort Study. J Atheroscler Thromb. 2020; May 2. doi: 10.5551/jat.54114.pubmed

コホート
国内の45地区に居住し,1988~1990年のベースライン調査に参加した40~79歳の110585人のうち,自己記入式質問票の回答に身長と体重のデータがあり,心血管疾患(CVD)と癌の既往のない69681人(男性29619人,女性40062人)を,19.1年間(中央値)追跡した。

体重の変化は,20歳時の体重を基準としてベースライン時までの体重の増減(kg)により,対象者を以下の11のカテゴリーに分類した。

 [C1]-12.5以下,[C2]-12.4~-10.0,[C3]-9.9~-7.5,[C4]-7.4~-5.0,[C5]-4.9~-2.5,[C6]-2.4~+2.4,[C7]+2.5~+4.9,[C8]+5.0~+7.4,[C9]+7.5~+9.9,[C10]+10.0~+12.4,[C11]+12.5以上
結 果
追跡期間中にCVDで死亡した人は4274人。死因の内訳は,虚血性心疾患924人,全脳卒中1849人(虚血性脳卒中1018人,脳内出血498人,くも膜下出血264人),その他のCVD 1501人であった。

◇ 対象背景
体重の増減によるカテゴリーごとの対象背景は以下のとおり。体重が大きく減少したカテゴリーから大きく増加したカテゴリーにかけての変化をみると,年齢が若く,教育年数が長く,飲酒率が高い傾向があった。

 人数(人): [C1]1894,[C2]2529,[C3]2428,[C4]7766,[C5]6575,[C6]14600,[C7]6386,[C8]9661,[C9]4466,[C10]5852,[C11]7524,P for trend<0.001
 男性: 54.3%,49.5%,43.2%,45.5%,40.9%,45.8%,37.8%,39.3%,36.9%,41.1%,41.4%,P for trend<0.001
 年齢(歳): 65.5,64.0,61.8,60.7,57.9,55.6,54.5,54.6,54.2,54.6,54.6 ,P for trend<0.001
 20歳時のBMI(kg/m2): 27.2,24.7,24.0,23.4,22.8,21.9,21.4,21.1,20.9,20.6,20.0,P for trend<0.001
 ベースライン時のBMI(kg/m2): 19.7,20.3,20.5,21.0,21.3,21.9,22.8,23.6,24.3,25.0,27.0,P for trend<0.001
 飲酒: 43.6%,44.0%,45.4%,45.6%,46.0%,46.2%,47.1%,47.0%,46.8%,47.7%,46.6%,P for trend<0.001
 大学卒業: 11.8%,11.8%,11.7%,12.1%,12.6%,13.9%,15.3%,15.8%,15.1%,15.6%,14.4%,P for trend<0.001

◇体重の増減とCVD死亡リスクとの関連
体重の増減によるカテゴリーごとのCVD死亡リスクの多変量調整ハザード比(95%信頼区間)は以下のとおり。体重が安定していた人C6に比して,大きく増減した人では全CVD死亡リスクが高くU字型の関連がみられ,虚血性心疾患死亡リスクについても同様の傾向がみられた。全脳卒中では,C6に比してC1,C2の死亡リスクが高く,逆J字型の関連がみられた。また,体重の大きな減少は脳内出血死亡リスクと関連したが,体重の増減とくも膜下出血死亡リスクとのあいだには有意な関連はみられなかった(年齢,性別,喫煙,飲酒,教育年数,歩行時間,運動,睡眠時間,自覚的ストレス,高血圧・糖尿病の既往で調整)。

・全CVD死亡
 [C1]1.50(1.30-1.72),[C2]1.45(1.28-1.66),[C3]1.20(1.03-1.39),[C4]1.15(1.04-1.28),[C5]1.14(1.02-1.29),[C6]1.00(対照),[C7]0.92(0.80-1.06),[C8]0.98(0.87-1.10),[C9]0.91(0.77-1.07),[C10]1.05(0.92-1.21),[C11]1.21(1.07-1.36)

・虚血性心疾患死亡
 1.33(0.95-1.86),1.48(1.10-1.99),1.40(1.01-1.93),1.30(1.03-1.64),1.40(1.09-1.80),1.00,1.10(0.81-1.49),1.20(0.93-1.55),0.99(0.69-1.44),1.32(0.99-1.77),1.62(1.26-2.08)

・全脳卒中死亡
 1.56(1.27-1.91),1.40(1.15-1.70),1.09(0.87-1.36),1.03(0.88-1.16),0.97(0.81-1.16),1.00,0.88(0.71-1.09),0.91(0.76-1.09),0.85(0.66-1.10),0.98(0.80-1.21),1.07(0.89-1.29)

・虚血性脳卒中死亡
 1.48(1.13-1.94),1.50(1.17-1.93),1.33(1.01-1.77),1.11(0.90-1.37),0.83(0.63-1.08),1.00,0.96(0.72-1.29),0.96(0.75-1.24),0.88(0.61-1.27),1.09(0.82-1.46),1.23(0.96-1.59)

・脳内出血死亡
 1.74(1.17-2.59),1.41(0.95-2.07),0.67(0.39-1.16),0.95(0.69-1.29),1.38(1.01-1.88),1.00,0.89(0.60-1.32),0.86(0.61-1.21),0.83(0.52-1.33),0.92(0.62-1.36),0.88(0.61-1.27)

・くも膜下出血死亡
 1.05(0.55-2.02),0.99(0.55-1.78),0.84(0.44-1.61),0.79(0.52-1.21),0.75(0.46-1.21),1.00,0.73(0.43-1.21),0.78(0.51-1.20),0.65(0.35-1.21),0.79(0.48-1.31),0.81(0.51-1.28)

◇ 結論
体重の変動は,増加,減少ともに心血管疾患(CVD)の危険因子であることが知られている。しかし,体重の変動とCVDに関する多くの研究は欧米からの報告であった。そこで,日本人一般住民を対象とした前向きコホート研究において,20歳時点からベースライン時までの体重の変化と,CVD死亡リスクとの関連を検討した。その結果,体重が安定していた人(2.5 kg以内)に比して,大きく増減した人(12.5 kg以上)では全CVD死亡リスクおよび虚血性心疾患死亡リスクが高く,U字型の関連がみられた。また,体重が大きく減少した人では脳内出血死亡リスクが高かった。体重の大きな変化は,全CVD死亡ならびに虚血性心疾患死亡,また体重の大きな減少は脳内出血死亡の危険因子となることが示唆された。


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