[学会報告・日本循環器学会2014] 久山町研究,岩手県北地域コホート研究,JMSコホート研究,吹田研究,高畠研究,亘理町研究


第78回日本循環器学会学術集会は,2014年3月21日(金)~23日(日)の3日間,東京にて開催された。ここでは,学会で発表された疫学研究の一部を紹介する。

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■ 目 次 ■ * タイトルをクリックすると,各項目にジャンプします
久山町研究 non-HDL-C値が高いほど,病理学的に評価した冠動脈硬化が進展
岩手県北地域
  コホート研究
BNPは尿中アルブミン/クレアチニン比やフラミンガムリスクスコアよりも優れた心不全発症リスク予測因子
岩手県北地域
  コホート研究
心血管イベントに対する高血圧のインパクトは併存する危険因子によって異なり,とくに70歳未満,男性,肥満者,糖尿病有病者で大きい
岩手県北地域
  コホート研究
心房細動は,全死亡・心血管疾患死亡・脳卒中死亡・急性心臓死・感染症死亡・脳卒中発症・心不全発症リスクを有意に上げていた
岩手県北地域
  コホート研究
男性の徐脈は心血管疾患発症・死亡リスク増加と関連
JMSコホート研究 心電図上QT時間は全死亡,心血管疾患死亡リスクと直線的な関連,心臓突然死リスクとJ字型の関連
吹田研究 口腔衛生異常の累積は高血圧罹患リスクと関連
高畠研究 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)値は,全死亡および心血管疾患死亡リスクの有用な予測因子
高畠研究 健診で見つかった非致死性不整脈は,潜在性心筋傷害ならびに将来の心血管死リスクと関連
亘理町研究 微量アルブミン尿は心血管イベントの独立した危険因子

[久山町研究] non-HDL-C値が高いほど,病理学的に評価した冠動脈硬化が進展

発表者: 九州大学・伊豆丸 堅祐 氏 (3月21日,Young Investigator's Awardファイナリスト口演)
  目的: non-HDL-C値と,剖検により病理学的に評価した冠動脈硬化病変との関連について検討。
  コホート・手法: 久山町研究。死亡前6年以内の健診データを有する剖検例415人。冠動脈病変については,(1)米国心臓協会(AHA)分類,(2)血管内膜への酸化LDL沈着の有無,(3)血管内膜へのマクロファージ浸潤の有無,(4)血管狭窄率の4つの基準を用いて評価した。 (久山町研究へ
  結果: non-HDL-C値が高いほど,AHA分類IV~VI度の高度冠動脈硬化病変,血管内膜への酸化LDL沈着,血管内膜へのマクロファージ浸潤のそれぞれの多変量調整オッズ比,ならびに血管狭窄率が高くなる有意な傾向がみとめられた。高度冠動脈硬化病変の有無による層別化解析を行うと,血管内膜への酸化LDL沈着,血管内膜へのマクロファージ浸潤のいずれについても,高度冠動脈硬化病変のない人ではnon-HDL-C値が高いほど多変量調整オッズ比が有意に高くなっていたが,高度冠動脈硬化病変のある人ではこうした関連はみられず。non-HDL-C値の高度冠動脈硬化病変との関連の強さは,他の冠動脈疾患危険因子(高血圧や糖尿病)とほぼ同等であった。
伊豆丸堅祐氏 伊豆丸堅祐氏のコメント
non-HDL-Cは,LDL,IDL,VLDL,small dense LDLなどの,動脈硬化と関連の強いリポ蛋白を総合的に評価できる指標として注目されています。これまでの疫学研究において,血清non-HDL-C値の上昇は冠動脈疾患の危険因子であると報告されていました。しかし,血清non-HDL-Cと冠動脈硬化の関係について,これまでに病理学的な検討はなされておらず,今回,一般住民の剖検例において,このことをはじめて検討し,意義深い成果を報告することができたと考えています。


[岩手県北地域コホート研究] BNPは尿中アルブミン/クレアチニン比やフラミンガムリスクスコアよりも優れた心不全発症リスク予測因子

発表者: 岩手医科大学・瀬川 利恵 氏 (3月22日,一般口演)
  目的: 一般住民を対象に,うっ血性心不全発症リスクと関連するとされる4つのマーカー(フラミンガムリスクスコア[FRS: 心血管疾患一般用],高感度CRP[hsCRP],尿中アルブミン/クレアチニン比[UACR],血漿脳性ナトリウム利尿ペプチド[BNP])の予測能を比較。
  コホート・手法: 岩手県北地域コホート研究の心血管疾患既往のない14752人を平均5.9年間追跡。 (岩手県北地域コホート研究へ
  結果: FRS,UACR,および血漿BNPがもっとも高い四分位の人では,それぞれ,もっとも低い四分位の人にくらべ,心不全の罹患率比が3.87倍,4.32倍,11.4倍と有意に高くなっていたが,hsCRPについては有意差はみられず。受信者動作特性曲線解析による曲線下面積(AUC)が最大であった血漿BNPが,心不全発症のもっとも有用な予測因子と考えられた。
瀬川利恵氏 瀬川利恵氏のコメント
本研究から,血漿BNPの高い人は,うっ血性心不全を発症する危険性の高いことが明らかになりました。今後,血漿BNPが高い人に対しどのような介入を行うべきなのか,介入によって実際に心不全の発症を予防できるかを検証する必要があると考えます。


[岩手県北地域コホート研究] 心血管イベントに対する高血圧のインパクトは併存する危険因子によって異なり,とくに70歳未満,男性,肥満者,糖尿病有病者で大きい

発表者: 岩手医科大学・田中 文隆 氏 (3月23日,一般口演)
  目的: 血圧と心血管イベント(心筋梗塞+脳卒中+心血管疾患死亡: CVD)リスクとの関連を,併存する危険因子の有無ごとに比較。
  コホート・手法: 岩手県北地域コホート研究の,虚血性心疾患・脳卒中既往のない22519人を平均5.5年間追跡。ベースラインのSBP値による4つのカテゴリー(SBP1: 119 mmHg以下,SBP2: 120~129 mmHg,SBP3: 130~139 mmHg,SBP4: 140 mmHg以上)を設定し,SBP2以上(前高血圧+高血圧)を血圧高値とした。検討した併存因子は年齢,性別,糖尿病,肥満,慢性腎臓病,喫煙,および脂質異常症。 (岩手県北地域コホート研究へ
  結果: SBP値が高くなるほどCVDイベントの多変量調整ハザード比が直線的に高くなる傾向がみとめられた。CVDイベントへの前高血圧の人口寄与割合(PAF)は8.3%,高血圧のPAFは18.3%。[併存因子の有無ごとの相対リスク]70歳未満,男性,肥満者,糖尿病有病者では前高血圧レベルから至適血圧に比したCVDイベントリスクの有意な増加がみられた。[併存因子の有無ごとの絶対リスク]併存の有無によってPAFの差がとくに大きくなっていたのは年齢,性別,肥満および糖尿病で,とくに70歳未満,男性,肥満者,糖尿病有病者で血圧高値によるCVDイベントのPAFが高かった。年齢による層別化解析を行うと,70歳未満ではおおむね前述と同様の結果であった。70歳以上では併存する危険因子を問わず,血圧高値によるPAFはいずれも高くなかったが,糖尿病有病者については血圧高値によるPAFが約55%と高かったことから,糖尿病の高齢者では血圧管理の重要性がとくに高いことが示唆された。
田中文隆氏 田中文隆氏のコメント
最近の本邦および欧米の血圧ガイドラインで,目標血圧レベルが引き上げられる傾向がみられますが,われわれのコホート研究では,70歳未満,男性,糖尿病者,肥満者において,前高血圧レベルからCVDイベントリスクの増加がみられることが明らかになりました。とくに70歳未満では,血圧高値のCVD発症への寄与度が高いことから,血圧管理の重要性が高いことが示唆されました。


[岩手県北地域コホート研究] 心房細動は,全死亡・心血管疾患死亡・脳卒中死亡・急性心臓死・感染症死亡・脳卒中発症・心不全発症リスクを有意に上げていた

発表者: 岩手医科大学・大澤 正樹 氏 (3月21日,ポスター)
  目的: 心房細動が,将来の全死亡および死因別死亡リスク,脳卒中発症および心不全発症リスクを上げているかどうかを前向きのコホート研究で検討。
  コホート・手法: 岩手県北地域コホート研究の,40歳以上で脳卒中または心筋梗塞の既往のない23634人を,ベースライン心電図検査で心房細動であった335人と心房細動のなかった23229人に分けて5.2年間(中央値)追跡(心不全発症リスクは,宮古地区住民を除いた心房細動199人および非心房細動の14020人対象として解析)。多変量調整ポアソン回帰分析を行って心房細動による各アウトカムの相対リスクと過剰死亡/発症を算出した。 (岩手県北地域コホート研究へ
  結果: 心房細動による全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡,急性心臓死,感染症死亡,脳卒中発症,心不全発症の相対リスク(vs. 非心房細動)は,それぞれ1.79,4.40,7.61,3.11,2.30,3.67,7.64であり,心房細動はこれらのリスクをいずれも有意に上げていた。また絶対リスクをみると,心房細動は1000人年あたり3.7人の総死亡,2.8人の心血管死亡,2.1人の脳卒中死亡, 0.7人の急性心臓死, 0.3人の感染症死亡,9.3人の脳卒中発症,5.0人の心不全発症の増加に寄与していた。
大澤正樹氏 大澤正樹氏のコメント
従来の日本のコホート研究としては,久山町研究とNIPPON DATA80の研究チームがそれぞれ,心房細動が虚血性脳卒中発症リスクを上げること(抄録へ),総死亡・心血管疾患死亡・脳卒中死亡リスクを上げること(抄録へ)を示しています。しかし,そのほかの死亡や疾患発症のアウトカム指標についてはこれまでに検討されていませんでした。本研究では,日本人を対象としては初めて,心房細動が急性心臓死,感染症死亡,心不全発症のリスクを上げていることを示しました。また,従来の研究が相対リスクの評価しかしていなかったことに対して,今回は絶対リスクによる評価をしたことで,心房細動がどの死因やどの疾患を具体的にどのくらい増加させているのかを明らかにした点でも大きな意義があると考えられます。


[岩手県北地域コホート研究]男性の徐脈は心血管疾患発症・死亡リスク増加と関連

発表者: 岩手医科大学・蒔田 真司 氏 (3月22日,ポスター)
  目的: 頻脈にくらべ,これまでにあまり検討されていない徐脈と心血管疾患および死亡リスクとの関連を検討。
  コホート・手法: 岩手県北地域コホート研究。心房細動,心血管疾患既往,狭心症・虚血性心疾患・高血圧治療中の人を除いた40~79歳の男性5958人および女性11818人を平均5.6年間追跡。ベースライン時の脈拍数により4つのカテゴリー(<60/60~69.5/70~79.5/≧80拍/分)を設定した。 (岩手県北地域コホート研究へ
  結果: 男性では,安静時脈拍数60~69.5拍/分の人にくらべ,80拍/分以上の人だけでなく60拍/分未満の人でも,心血管イベント(心筋梗塞+脳卒中+心血管疾患死亡)の多変量調整ハザード比が有意に増加していた。この関連は60歳以上の人のみを対象とした解析でも同様であった。また,心血管イベントの内訳をみると,60拍/分未満の人では心筋梗塞および脳梗塞の多変量調整ハザード比が,80拍/分以上の人では脳梗塞および脳内出血の多変量調整ハザード比が,それぞれ有意に高かった。女性では安静時脈拍数と心血管イベントリスクとの関連はみられず。
蒔田真司氏 蒔田真司氏のコメント
これまでの地域住民コホートや臨床研究のいくつかの報告によると,徐脈でも若干の心血管疾患リスクの上昇がみられています。しかし,グループ分けされた心拍数のレベルや対照の設定は報告によって異なっており,また徐脈のリスクに言及した報告はほとんどありませんでした。本研究では,脈拍数60~69.5拍/分を対照とした場合,60拍/分未満の徐脈でも心筋梗塞および脳梗塞のリスクが上昇していることを初めて確認しました。この機序として,徐脈による拡張期血圧の低下あるいは拡張期の中心血圧の低下による冠血流の低下,脈圧の上昇,スポーツ心臓との関連,洞結節機能障害,潜在性の甲状腺機能低下など,種々の可能性が挙げられるため,今後詳細な検討が必要です。健診などで洞性徐脈がみられた場合,原因検索やその後のフォローが必要である可能性も示唆されます。


[JMSコホート研究] 心電図上QT時間は正常域でも全死亡,心血管疾患死亡リスクと直線的な関連,心臓突然死リスクとJ字型の関連

発表者: 自治医科大学・石川 譲治 氏 (3月23日,一般口演)
  目的: 心電図上QT時間と全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡リスクとの関連を検討。
  コホート・手法: JMSコホート研究。心電図検査を実施し,不整脈のみられなかった10804人を平均141.9か月間追跡。解析にはQT時間をBazettの式により補正したQTc時間を用いた。 (JMSコホート研究へ
  結果: QTc時間と全死亡,心血管疾患死亡,脳卒中死亡リスクは直線的な関連を示しており,QTc時間がもっとも長い四分位では,もっとも短い四分位に比し,全死亡および心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比が有意に高くなっていた。QTc時間と心臓突然死のリスクはJ字型の関連を示しており,QTc時間が2番目に低い四分位に比し,QTc時間がもっとも低い四分位,ならびにもっとも高い四分位において心臓突然死の多変量調整ハザード比の有意な増加がみとめられた。


[吹田研究] 口腔衛生異常の累積は高血圧罹患リスクと関連

発表者: 国立循環器病研究センター・岩嶋 義雄 氏 (3月21日,ポスター)
  目的: 口腔内の健康度と高血圧との関連を検討。
  コホート・手法: 吹田研究。歯科検診を受けた,心血管疾患既往のない30~79歳の1643人(断面解析)。 (吹田研究へ
  結果: 口腔衛生状態の不良を示す4つの項目(重度の歯周病[community periodontal index of treatment needs: CPTINのステージ4],歯肉出血,残存歯数[もっとも少ない四分位],不正咬合[Eichner IndexのクラスC])について,多変量調整後のオッズ比は,いずれも単独では高血圧罹患との有意な関連を示していなかったが,口腔衛生状態の不良を示す該当項目数が0の群にくらべて,3つ以上の群での高血圧罹患のオッズ比は有意に高かった。降圧薬非服用者におけるサブグループ解析では,多変量調整後も,口腔衛生状態の不良を示す該当項目の数が多いほど収縮期血圧値および拡張期血圧値が有意に高くなる関連がみとめられた。
岩嶋義雄氏 岩嶋義雄氏のコメント
これまでに,残存歯数の減少や歯周病の存在が高血圧リスクと関連することが欧米の疫学研究から示されています。今回,2008年から歯科検診を開始している吹田研究の日本人都市部一般住民を対象とした検討を行った結果,口腔衛生状態の不良の累積と高血圧罹患との関連がみとめられました。以前から,歯周病と高血圧との関連に炎症が介在している可能性が指摘されていますが,そのほかに,口腔機能の悪化により,より味の濃いものや柔らかいものを好むようになる,また,果物を食べなくなるといった食事の嗜好の変化による影響も示唆されています。本研究では,かみ合わせ機能も含めて評価しており,咬合機能も口腔機能と高血圧との関連に関与していることが示唆されました。また,今回は詳しい食事内容の調査はしていませんが,アルコールや果物,ソフトドリンクの摂取といった食習慣関連因子による調整を行っていることから,少なくとも,食習慣の変化とは別に,口腔衛生状態の不良と高血圧には直接的な関連がある可能性があると考えられました。今後も引き続き追跡データを蓄積し,縦断的な検討を行いたいと考えています。


[高畠研究] 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)値は,全死亡および心血管疾患死亡リスクの有用な予測因子

発表者: 山形大学・大瀧 陽一郎 氏 (3月23日,一般口演)
  目的: 心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)値と全死亡,ならびに心血管疾患死亡リスクとの関連を検討。
  コホート・手法: 高畠研究の3503人を2124日間(中央値)追跡。 (高畠研究へ
  結果: H-FABP値(自然対数変換)の平均は1.25 ng/mL。H-FABP値の1 SD上昇は,全死亡ならびに心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比と有意に関連していた。一方,BNP値の1 SD上昇は,心血管疾患死亡の多変量調整ハザード比と有意に関連していたが全死亡リスクとの関連はなし。Net classification improvement(NRI)およびintegrated discrimination index(IDI)により,全死亡リスクを予測する多変量モデル(年齢,高血圧,糖尿病,肥満,BMIを含む)にH-FABPまたはBNPを加えた場合の予測能の改善度を検討した結果,H-FABPの追加によりNRIとIDIのいずれも有意に改善されたが,BNPの追加ではIDIのみが有意に改善された。
大瀧陽一郎氏 大瀧陽一郎氏のコメント
本研究は一般住民健診において,心筋傷害マーカーであるH-FABPと全死亡および心血管疾患死亡の関連を検討したものです。これまで一般住民において,BNPなどの心臓バイオマーカーが全死亡を予測することが報告されていますが,H-FABPと全死亡の関係を検討した報告はありませんでした。検討の結果,H-FABPは健常な一般住民においても検出されました。またその値は,心血管疾患の危険因子である高血圧,糖尿病,肥満,メタボリックシンドロームの合併により増加しており,さらにこれらの危険因子が重積した場合には一層高値を示しました。H-FABPは年齢,性別,高血圧,糖尿病,肥満,メタボリックシンドローム,慢性腎臓病,BNPで補正した後も,有意に全死亡を予測することが示されました。今後,全死亡のみならず,H-FABPと心疾患発症の関連を検討し,健診でのH-FABP値測定の意義を検討していく予定です。


[高畠研究] 健診で見つかった非致死性不整脈は,潜在性心筋傷害ならびに将来の心血管死リスクと関連

発表者: 山形大学・大瀧 陽一郎 氏 (3月21日,ポスター)
  目的: 健診で見つかった,非致死性不整脈と潜在性心筋傷害,ならびに将来の心血管疾患死亡リスクとの関連を検討。
  コホート・手法: 高畠研究の3520人を平均2124日間追跡。 (高畠研究へ
  結果: ベースライン健診で見つかった心房期外収縮(APC),心室期外収縮(VPC),心房細動(AF)の割合はそれぞれ3.1%,2.8%,1.5%。APC,VPC,AFを有する人は,それぞれ有さない人にくらべて,ベースラインの脳性ナトリウム利尿ペプチド(BNP)値ならびに心臓型脂肪酸結合蛋白(H-FABP)値がいずれも有意に高く,潜在的な心筋傷害がすでに進展していることが示唆された。VPCおよびAFは,いずれも将来の心血管疾患死亡リスクと独立かつ有意な関連を示していた。
大瀧陽一郎氏 大瀧陽一郎氏のコメント
本研究は一般住民健診において,非致死性不整脈と潜在的心筋傷害および将来の心血管疾患死亡リスクの関連を検討したものです。山形県高畠町における心房期外収縮,心室期外収縮,心房細動などの非致死性不整脈の頻度は,従来の報告とほぼ同等でした。興味深いことに,非致死性不整脈は,いずれも心筋傷害マーカーであるH-FABP値と関連しており,これらの非致死性不整脈をもつ人は微細な心筋傷害をきたしている可能性が示唆されました。近年,観察研究で,心室期外収縮や心房細動を有すると予後が不良であることが示されています。本研究においても,心室期外収縮や心房細動を有する住民の予後は不良でした。他方,心房期外収縮は予後との関連はないものの,微細な心筋傷害を伴っていました。心房期外収縮は心房細動発症の危険因子であるとの報告もあり,今後は心房細動の新規発症リスクを含めて検討していく必要性が示唆されました。


[亘理町研究] 微量アルブミン尿は心血管イベントの独立した危険因子

発表者: 東北労災病院・金野 敏 氏 (3月22日,ポスター)
  目的: 日本人一般住民でも微量アルブミン尿が心血管疾患の独立した危険因子となるかどうかを前向きに検討。
  コホート・手法: 亘理町研究。2009年に健診を受けた,顕性蛋白尿のない3064人を平均40.3か月追跡。
  結果: 微量アルブミン尿を有する人では,有さない人に比して心血管イベント(脳卒中+急性心筋梗塞+血行再建術を要する狭心症+心血管疾患死亡)の発症率が有意に高かった。微量アルブミン尿は多変量調整後も,心血管イベントのリスクと独立した有意な関連を示した。
金野 敏氏 金野 敏氏のコメント
海外では多くの疫学研究において,一般住民の微量アルブミン尿保有と心血管イベントリスクの関連が示されていますが,日本人でのエビデンスは限られています。今回の結果は,日本の一般住民でも微量アルブミン尿を指標とすることで心血管リスクの高い集団を早期に同定できる可能性を示しており,今後もさらにこのコホートを追跡していくことで,より強固なエビデンスの確立を目指したいと考えています。




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