[学会報告・日本疫学会 2009] ERA JUMP,久山町研究,JACC,JMSコホート研究

会場写真

2009年1月23日(金)~24日(土),金沢市民文化ホール(石川県)にて第19回日本疫学会学術総会が開催された。

以下に,総会で発表された循環器関連疫学研究の一部を,発表者のコメントもまじえながら紹介する。
また,本サイト編集委員の磯博康氏(大阪大学),上島弘嗣氏(滋賀医科大学)に,注目研究などについて会場でうかがった(4月公開予定)。


■ 目 次 (スタディ名順) ■ * タイトルをクリックすると,各項目にジャンプします    会場インタビュー :  上島 弘嗣氏 上島 弘嗣氏 磯 博康氏 磯 博康氏

[ERA JUMP] ハワイの日系人の頚動脈硬化は日本人よりも進んでいた

発表者: 滋賀医科大学・門田 文 氏 (1月23日(金),ポスター)
  目的: 生活習慣の欧米化が進んでいるハワイ在住の日系人と日本在住の日本人において,代謝性危険因子やメタボリックシンドロームの有病率,および頸動脈内膜-中膜肥厚度(IMT)による頸部動脈硬化症の進展度を比較。
  コホート: ERA JUMPに参加した40歳代男性616人(日本在住の日本人313人,ハワイ在住の日系人303人) (ERA JUMPのトップページへ移動
  結果: 日系人では,頚動脈硬化の進展度,および代謝性危険因子やメタボリックシンドロームの割合が日本人よりも有意に高かった。
 門田文氏のコメント
1960年代の日系人と日本人の比較研究では冠疾患死亡率は日系人で高く,脳卒中死亡率は日本人で高いと報告されてきました。日本でも欧米型生活習慣変化に伴い,近年では脳卒中死亡率は減少しています。しかし今回の検討結果から,日本人においても,生活習慣の欧米化が進めば,今後,頚部動脈硬化症に関連する疾患が増加することが懸念されます。


[ERA JUMP] 冠動脈石灰化に対するメタボリックシンドロームの影響は,ハワイの日系人よりも日本人で大きかった

発表者: 滋賀医科大学・門脇 崇 氏 (1月23日(金),ポスター)
  目的: メタボリックシンドロームと冠動脈石灰化の関連について,日本在住の日本人,ハワイ在住の日系人,米国在住の白人で比較検討。
  コホート: ERA JUMPに参加した40歳代男性926人(日本人313人,日系人303人,白人310人) (ERA JUMPのトップページへ移動
  結果: メタボリックシンドローム有病者における冠動脈石灰化のオッズ比(vs. 非有病者)は,日系人よりも日本人で大きかった。
門脇崇氏  門脇崇氏のコメント
最近の疫学調査によると,日本人の冠動脈疾患は増加している可能性があります。世界一の長寿大国であるわが国で動脈硬化が進行しにくい要因を明らかにすることは,欧米にとってのみならず,今後のわが国の予防施策を考える上でも重要です。日本人の動脈硬化の特徴を明らかにする疫学的手法として,従来の国内での疫学調査以外に,このような国際比較によってわが国の特徴を明らかにできる可能性が示唆されたものと考えています。


[ERA JUMP] 日本人は,日系人および白人よりも内臓脂肪/皮下脂肪比が有意に大きい

発表者: 滋賀医科大学・門脇 紗也佳 氏 (1月24日(土),口演)
  目的: 体脂肪分布(断面積でみた内臓脂肪/皮下脂肪比)を,日本在住の日本人,ハワイ在住の日系人,米国在住の白人で比較検討。
  コホート: ERA JUMPに参加した40歳代男性917人 (日本人310人,日系人300人,白人307人) (ERA JUMPのトップページへ移動
  結果: 日本人は,日系人および白人にくらべ,皮下脂肪面積が有意に小さく,内臓脂肪/皮下脂肪比が有意に大きかった。
門脇紗也佳氏  門脇紗也佳氏のコメント
ハワイの日系人は遺伝的には日本人でありライフスタイルは欧米型です。この集団の腹部脂肪分布が日本人よりも米国白人に近いということは,内臓脂肪分布の蓄積が遺伝ではなくライフスタイルによるものと考えられます。ハワイの日系人の現在の状況は日本人の肥満が進行した姿と考えられ,今後の予防施策における肥満対策の重要性を示唆していると思われます。


[久山町研究] 正常高値血圧から心血管疾患リスクが上昇

発表者: 九州大学・福原 正代 氏 (1月24日(土),口演)
  目的: 危険因子の時代的な変化を反映している最近のコホートにおいて,JSH2004の各血圧分類* と心血管疾患発症リスクとの関連を検討。 (*JSH2009でも分類に変更なし)
  コホート: 久山町研究の第3集団の2634人を1988年から14年間追跡 (久山町研究のトップページへ移動
  結果: 血圧が高いカテゴリーほど心血管疾患発症リスクが上昇しており,「至適血圧」に対して「正常血圧」「正常高値血圧」でも有意なリスク上昇がみとめられた。


[JACC] 塩辛いものが好きだと脳卒中リスクが上昇

発表者: 大阪大学・池原 賢代 氏 (1月23日(金),ポスター)
  目的: 質問票により調査した食塩嗜好と脳卒中および虚血性新疾患死亡との関連を検討。
  コホート: JACC Studyコホートの84790人を約10年間追跡 (JACCのトップページへ移動
  結果: 食塩嗜好と心血管疾患死亡(とくに脳卒中死亡)との関連がみとめられた。
 共同発表者の磯博康氏(大阪大学)のコメント
よくある塩分の摂取量ではなく,塩辛いものの「好み」が長期的な予後に与える影響を検討したデータです。塩分摂取で調整すると関連はすこし弱められたものの,日本人の食塩嗜好が脳卒中に関連しているというのは非常に興味深い結果ではないかと思います。


[JMSコホート研究] 尿蛋白は全死亡リスクと関連

発表者: 自治医科大学・定金(さだかね) 敦子氏 (1月23日(金),ポスター)
  目的: 試験紙法による尿蛋白と心血管疾患発症および死亡リスクとの関連を検討。
  コホート: JMSコホート研究の8927人を追跡。 (JMSコホート研究のトップページへ移動
  結果: 対象者の約96 %がベースライン時に尿蛋白陰性。尿蛋白の有無と心血管疾患発症リスクとの関連は,男性ではみられなかった。一方,尿蛋白の有無と全死亡リスクとの関連は,性別を問わずにみとめられた。
 定金敦子氏のコメント
尿蛋白定性試験は特定健診をはじめとする多くの健診で実施されていますが,その臨床的,また,疫学的な意義は十分には検討されていません。地域の健診(基本健康診査)受診者を対象としているJMSコホート研究において,尿蛋白と循環器疾患罹患や死亡の関連を検討することは重要と考えています。また,GFRなどの他の腎疾患の指標と尿蛋白が,各アウトカムとそれぞれどのように関連するのかの比較にも興味が持たれます。


[JMSコホート研究] 身体活動量は脳卒中・心筋梗塞死亡リスクの低下と関連

発表者: 浜松医科大学・柴田 陽介 氏 (1月24日(土),口演)
  目的: 日本ではまだ報告の少ない身体活動と脳卒中・心筋梗塞死亡との関連を検討。
  コホート: JMSコホート研究の9810人を約12年間追跡 (JMSコホート研究のトップページへ移動
  結果: Physical Activity Index(PAI)でみた身体活動量は,男女とも脳卒中・心筋梗塞死亡リスクの低下と関連していた。
柴田陽介氏  柴田陽介氏のコメント
欧米ではすでに,身体活動量が多いほど脳卒中や心筋梗塞のリスクが低下するという報告があります。日本の大規模なコホート研究での検討はまだ少ないため,JMSコホートで検討した結果,やはり身体活動量が多い人ほど脳卒中・心筋梗塞死亡リスクが少ないということが示されました。この研究では死亡だけでなく発症のデータも集めているので,今後さらに疾患別の解析なども進めていきたいと思っています。


[JMSコホート研究] 柑橘類の摂取頻度が高いほど全死亡リスクが低下

発表者: 浜松医科大学・山田 友世 氏 (1月24日(土),ポスター)
  目的: 質問票により調査した柑橘類の摂取頻度と死亡との関連を検討。
  コホート: JMSコホート研究の10853人 (JMSコホート研究のトップページへ移動
  結果: 男性では柑橘類の摂取頻度が高いほど全死亡リスクが少なく,女性でも有意ではないものの同様の傾向をみとめた。
 山田友世氏,早坂信哉氏(共同研究者:浜松医科大学)のコメント
浜松がある静岡県はみかんの大生産地であり,浜松市内でも本研究の対象となった地区があります。今回の研究で,柑橘類摂取により全死亡リスクが約20~30 %減少する可能性が示唆されました。今後,死因別リスクの研究等を行い,柑橘類の健康効果の詳細をさらに解析し,健康指導に活かしていきたいと考えています。



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