新しいトピックス

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  「FHSの歴史の中でも胸躍る時を迎えようとしている」  
「危険因子」という用語を生み出したFramingham Heart Study(FHS)。危険因子を是正すれば心血管疾患を予防できるというメッセージは世界中の臨床に大きな影響を与えた。研究開始から60年が過ぎようとしている今,FHSのディレクターであるDaniel Levy, MDがインタビューに答えてくれた。
(インタビュー: 2007年4月)

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FHSの3つの世代コホート
(クリックで拡大)

―FHSはオリジナル(第1世代)コホート(Framingham Heart Study),第2世代コホート(Framingham Offspring Study),第3世代コホート,少数民族コホート(Omni Study)がありますが,3世代コホート間の危険因子の違いは何でしょうか。

 2007年に第3世代コホートの参加者背景を発表しました。その論文で3世代間の背景を比較しています(Am J Epidemiol. 2007; 165: 1328-35.pubmed)。世代ごとの危険因子の変化は興味深いもので,概ね望ましい結果でしたが,BMIと糖尿病は若い世代の方が増加していました。喫煙率は若い世代ほど低下し,血圧も低くなっていますし,コレステロール値も世代とともに良い方向にむかっています。加えて治療率が上昇しています。10年,20年前なら降圧治療,脂質低下治療をしなかったような人たちを,今日は治療しているのです。


BMIのグラフ

―心血管疾患予防のためにFHSは今後何に注目していくのでしょうか。

 大きく2つを追究していきます。

 1つは,心血管疾患のバイオマーカーです。2006年に発表した10のマーカーの検討(N Engl J Med. 2006; 355: 2631-9.pubmed)では,興味深いことに心血管疾患のリスクを最もよく予測したのはBNPで,CRPは良好な予測因子にはなりませんでした。CRPが良好な予測因子だとしている研究もありますが,FHSのサンプルではBNPが最善のマーカーでした。とはいえ,予測能の上昇はさほど大きくはありませんでした。まもなく新しいバイオマーカープロジェクトを始動させ,10個のバイオマーカーだけではなく,50,100,さらにはそれ以上のマーカーを調べて,代謝性疾患やアテローム性動脈硬化の生化学的サインへの理解をより深めていきたいと考えています。

 もう1つは,心血管疾患発症の遺伝的リスクの解明です。FHS内にプロジェクトを立ち上げており,9,000人の参加者のそれぞれ50万件におよぶ遺伝的変異について調べる予定です。つまり,50億の遺伝子情報を得ることになるのです。2007年中に結果を入手できるはずです。2008年の解析でFHSがこれまでの60年間の研究で得たよりもはるかに多くのデータが得られるのです。これは莫大なソースとなり,一般公開し研究機関には無料で利用できるようにする予定にしています。FHSの歴史の中でも胸躍る時を迎えようとしています。


― Framingham Heart Study 関連文献 (2000年以降) ―

  • 炎症マーカー(CRP)・線溶能マーカー(PAI-1)・糸球体内皮機能マーカー (尿アルブミン/クレアチニン比)の上昇と高血圧発症は有意に関連する →■Worldwide 文献ニュース■
    Multiple biomarkers and the risk of incident hypertension. Hypertension. 2007; 49: 432-8.pubmed
  • apo B/apo A-I 比のCHD予測能は既存の脂質マーカーと同等 →■Worldwide 文献ニュース■
    Clinical utility of different lipid measures for prediction of coronary heart disease in men and women. JAMA. 2007; 298: 776-85.pubmed
  • プラスミノーゲンアクチベーター抑制因子1(PAI-1)およびアルドステロン高値はメタボリックシンドローム(MetS)および長期にわたるMetS構成因子の変化と関連した
    Multimarker approach to evaluate the incidence of the metabolic syndrome and longitudinal changes in metabolic risk factors: the Framingham Offspring Study. Circulation. 2007; 116: 984-92.pubmed
  • ナトリウム利尿ペプチド,アドレノメデュリン,ホモシステインは動脈スティフネスと部分相関がみられ,相関には性差があった
    Associations of plasma natriuretic peptide, adrenomedullin, and homocysteine levels with alterations in arterial stiffness: the Framingham Heart Study. Circulation. 2007; 115: 3079-85.pubmed
  • 血中ホスファチジルコリンドコサヘキサエン酸含量と認知症,アルツハイマー疾患のリスク
    Plasma phosphatidylcholine docosahexaenoic acid content and risk of dementia and Alzheimer disease: the Framingham Heart Study. Arch Neurol 2006; 63: 1545-50.pubmed
  • 社会関係と炎症マーカー
    Social networks and inflammatory markers in the Framingham Heart Study. J Biosoc Sci 2006; 38: 835-42.pubmed
  • 教育レベルと炎症マーカーの関係
    Association of educational level with inflammatory markers in the Framingham Offspring Study. Am J Epidemiol 2006; 163: 622-8.pubmed
  • 食品頻度質問票(food frequency questionnaire)により評価したコリンとベタイン摂取量の血中総ホモシステイン濃度の関係
    Dietary choline and betaine assessed by food-frequency questionnaire in relation to plasma total homocysteine concentration in the Framingham Offspring Study. Am J Clin Nutr 2006; 83: 905-11.pubmed
  • 血清BNP値と血圧値の追跡
    Plasma brain natriuretic peptide levels and blood pressure tracking in the Framingham Heart Study. Hypertension 2003; 41: 978-83.pubmed


  日本のプライマリーケア医に伝えたいこと

  高血圧

  脂質異常症

  メタボリックシンドローム(MetS)

  慢性腎疾患(CKD)

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